出羽 孝行
学修支援・教育開発センター長
2023年度より学修支援・教育開発センター長の任を仰せつかりました文学部の出羽孝行と申します。非常勤講師時代を含めて大学の教壇に立つようになってから今年でちょうど20年目になります。
ご承知のように、大学院は2007年度、学部は2008年度より、各大学でのファカルティ・ディベロップメント(以下、FD)の取り組みが義務化されるようになりました。改めてFDの定義を確認しておくと、2005年の中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像」において「教員が授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取組の総称」とされています。実際にはFDは非常に広義に捉えられており、本学でも教育面、研究面、社会貢献活動面それぞれの領域別にFDの定義が定められています。その中でも教育に関するFDは「各教学責任主体が掲げる、建学の精神に基づいた教育理念・目的を実現し、教学マネジメントを推進するための組織的・継続的な教育の質及び教育力の向上を目指した、教職員の能力開発を含むすべての取り組み」と定義されています。
教学マネジメントは昨今の高等教育機関でよく使われる用語であり、マネジメントという言葉から教育現場で使う用語として違和感を持つ方もおられるかもしれません。ところで、教学マネジメントの中の鍵概念の中にカリキュラム・マネジメントというものがあります。カリキュラム・マネジメントは、主に小・中・高等学校で使われていますが、大学においても従来から教員は日常的に自身の担当する科目のマネジメントを行ってきました。大学や教学主体が定めるポリシーに基づき、担当する科目の教育の目的、内容、方法、評価基準などを設定し、科目の展開期間全体にわたって絶えず授業を改善し続けてきたはずです。こうした個々の教員の取り組みが、FD活動の活性化により、制度的に教学組織全体で実施されるようになったということでしょう。学修支援・教育開発センターでは学生のよりよい学びの実現や、そのための教員の取り組みを積極的に支援してまいります。
前述のように、FDは多義的な言葉ですが、その中でも私が重視していきたいことの一つは、高等学校と大学との連携の活性化です。これまで高校までの学びと大学での学びは異なると言われてきましたが、2022年度から高校で年次適用されている新しい学習指導要領では探究的な学びが重視されています。つまり、高校での学びもこれまでの知識伝達中心型から、大学での学びのように自身で問題を設定し、それを探究していく形の学習へと転換していくことが言われているのです。今こそ、私たち大学教員の持つ教育面での専門性を高校でも活用してもらうと共に、多様な背景をもつ生徒に対して学びに対する興味・関心を誘発させるために多様な教育を展開してきた高校教員の専門性を大学でも活かしていくチャンスだといえます。そもそも、学び手から見たとき、高校から大学へ進学したからといってその学びは分断されるものではなく、常に個人の中での学びは連続しているはずです。高校と大学がこれまで以上に、連携することにより、大学教育もよりよいものになっていくと考えています。
こうした活動を含め、これまで本学が蓄積してきた先人たちの教育資源・教育成果をより発展していけるように尽力してまいりますので、どうかよろしくお願いいたします。