2011年08月03日
2011年度第3回FD報告会は、8月3日に開催された「2011年度第2回文学部FD研究会」を全学に公開する形で実施されました。当日は、教員39名、事務職員11名の計50名が参加しました。
精神的・心理的悩みをみつ学生の対応方法に関する講習を行ってほしいという教員の要望に応える形で、次年度から開設される臨床心理学科に就任予定の教員を講師に研究会を開催しました。友久教授から主要な精神的・心理的疾患の特徴についてお話しいただいた後、吉川教授から学生が不調を訴えない場合、不調が明らかな場合、緊急対応が必要と思える場合に分けて、教員として可能な具体的対応について説明いただきました。
参加者のアンケートからは今後も継続して開催してほしいとの声が多く寄せられ、このテーマに関する関心の高さがうかがえました。
臨床心理学科の教員はもとより、保健管理センターと連携のもと、一人でも多くの学生をサポートしていきたいと思います。
【杉岡孝紀 文学部FD活動推進委員会委員長のコメント】
ユニバーサル化時代を迎えた大学は、多様な学生に対するきめ細かな指導に重点を置いた、学生中心の教育へと転換する必要性があります。そうした中で、今後わたくしたちは教育の一環として、心の悩みを抱えた学生に対応することも求められてきます。もちろん、心の不安、苦悩は青年期であれば誰もが持つものだとも考えられますが、最近はいわゆる心理的・精神的疾病に該当するのではと思われる学生に接することも少なくありません。そうした場合、たくしたちは知識としては、共感(同感)をもって相手の話をひたすら聴くことの重要性を知ってはいても、しかしながら心理療法の訓練を受けた専門家ではない素人が果たして、どのようにどこまで対応してよいのかその判断に困るわけです。
そこで、友久教授からは医師としての立場より、殊に気分障害に関して、その原因が明確である場合と不明である場合の2つのタイプについて説明いただき、両者の対応の違いについて教えていただきました。また発達障害について、その定義と具体的特徴について説明を受けました。また、吉川教授からは、教員としての可能な具体的な対応の仕方について説明がなされ、素人見立ての危険性について繰り返し忠告がなされると共に、従来の叱り型の面談を止めてどこまでも深い傾聴の姿勢をもち、学生と信頼関係を築いた上で、専門機関での相談・治療へとスムーズに移行させていくことが必要であることを明らかにしていただきました。
なお、今回は90分という短い時間ではありましたが、お2人の先生の報告後にはフロアーから具体的な事例を挙げての質問もなされ、実に有意義な研究会となりました。心理的・精神的な苦悩への対応は現代において極めて重要な課題であるだけに、同一テーマで研究会を継続できればと考えています。
<FDアドバイザリーボードのコメント>
【村田健三郎 入試部長】
研究会では、友久教授から『本学保健管理センターでの相談実態』、精神的不適応の分類に基づく『発達障害の特徴、内因性疾患の特徴、外因性疾患の誘因と特徴』などが紹介された。また、専門職ではないが直接対応しなければならない可能性のある教育職員が『すべきこと・できること』と『してはいけないこと』について指摘された。次いで、吉川教授からは、『学生の不調をどのように見分けるか、学生が不調を訴える場合・学生が不調を訴えない場合・不調が明らかな場合の対応、緊急対応が必要と思える場合の姿勢』に加え、『日常的な対象学生との接触のあり方』などの報告、説明がなされた。
今回の報告は、専門的知識を持たずしても(専門家ではなくとも)、教職員が心理的問題を抱えた学生に対応する場合の姿勢や考え方、配慮しなければならない点など非常に分かりやすいものであった。とは言え、専門家ではないのであるから、学生支援においては、既存施設の専門スタッフとの協力・共同した支援を念頭に置いておくことが肝要である。また、吉川教授の「うまく『かかわれる』機会を作ることが大事」を記憶に止めておきたい。
今回の文学部FD研究会は、学生中心の教育への転換が必要とのコンセプトのもと、様々な要因で心理的問題を抱えた学生への支援のあり方を共有することを目的としていた。主旨と内容に鑑みて、研究会参加者だけの共有に終わることなく、全教職員が共有できる方策を考えてみることも参加者の責務ではとも思う。
【小長谷大介 学部FD運営委員会委員】
近年、精神的・心理的悩みを抱える学生が増えるなかで、それに対応する学校側の環境づくりが求められている。このとき、単に学校内の保健管理センターを中核に据えた体制が整えばよしではなく、対応先の一端を担う各教職員もその環境づくりに協力的でなければならない。しかし、教職員が各自の熱意で対応してしまうことは大変危険であるという。今回のFD報告会における友久・吉川両先生の話の共通項はこの点であったと思われる。例えば、一教員が「不調を訴える学生、ないしは不調と思われる学生に対し、「先生」なんだからこう対応しようなどと構えて応ずること」は、もっとも危険な行為という。「あくまで普通の話の一つとして聞くこと」を心がけて、踏み込み過ぎない対応をしながら、専門家に任せていく、ないしは協力していくのが適切な対応になるということであった。今回のFD報告の内容は、教職員にとって、学生の心的不調に対応する際の重要な指針となるものであった。