FDサロン 2004年度開催記録

開催日 話題提供者 話題
第11回 2004.12.16 北村 高 教授 (文学部) アナログ文学部FD一直線
第10回 2004.12.10 宮浦 富保教授 (理工学部)
横田岳人講師 (理工学部)
環境ソリューション工学科のカリキュラム~野外における実習の進め方~
第9回 2004.11.26 中川 孝博助教授(法学部) 「マスプロ講義における教員と学生のコミュニケーション~刑事法入門の実践例」
第8回 2004.11.16 湯川 宗紀 非常勤講師
(理工学部)
「必要な道具をうまく使いこなすために」
第7回 2004.10.28 藤原 直仁 助教授
(短期大学部)
「社会福祉施設実習から福祉体験活動へ」
第6回 2004.10.15

ファーマノフスキーマイケル

助教授
(国際文化学部)

Going Beyond CALL:A New Approach to Using Computers in Language Learning」(「コンピューターを使用した新しい学習法」)
第5回 2004.9.30 伊藤 敏和 教授
(経済学部)
「個性ある学生を育てるには(数学の教育を通してみた)」
第4回 2004.7.15 小長谷 大介 講師
(経営学部)
「教養教育のあり方についての私見 ~科学史教育の経験から感じたこと~」
第3回 2004.7.6

近藤 久雄
(大学教育開発センター長)

「導入教育の模索」
第2回 2004.6.17 村澤 真保呂 講師
(社会学部)
「管理教育の現状とその対処」
第1回 2004.5.27 上垣 豊 教授(法学部) 「FDを考える -大学教育改革への私見-」

FDサロン開催記録 2004(詳細)

2004-第11回 「アナログ文学部FD一直線」

北村 高 教授(文学部)
深草学舎 紫英館1階 大学教育開発センター
12月16日(木)17:00~19:00

デジタル化が進む世の中で、大学の教員は何を考えているのだろうか。新機種が発売されたり、他の大学や施設で新しい機器が導入されると、使用法も分からずに欲しがる奇妙な性格を有した動物が多く生息する地域が大学と呼ばれる保護区である。

このような中で、文学部の講義は、デジタル化に対応出来るのであろうか。もし、出来るとすればどの程度可能なのだろうか。文学部にもデジタル化に対応した機器は存在するが、なぜ多くの教員はそれを使用しないのか。

文学部FD活動推進委員会が発足後、文学部の教員が、どのようにFD活動に取り組んでいるのか紹介するとともに、文学部としてのFD活動の在り方を考える。

2004-第10回 「環境ソリューション工学科のカリキュラム~野外における実習の進め方~」

宮浦富保教授(理工学部)、横田岳人講師(理工学部)
瀬田学舎 1号館5階 533会議室
12月10日(金)15:10~17:00

理工学部環境ソリューション工学科は、理工学教育の新たな展開として、複雑化する環境問題を正しく認識し、環境問題解決に向けた取り組みが出来る人材育成を目的として、2003年4月にスタートを切った。これまでの理工学教育の中では馴染みの薄かった生物学(生態学)を取り入れ、フィールドでの実習を含めた数多くの実習の中で、現場にそくしたフィールド調査と調査結果を解析する能力向上を図っている。

今回のサロンでは、環境ソリューション工学科の特色となるカリキュラムについて簡単に紹介し、学科の目玉ともいえる野外実習への取り組みについて話題提供をしたいと考えている。野外における実習では、実習内容の充実も大切であるが、まず何より安全に事故無く行うことが重要となる。また、学生全体に目を配り学生全体が実習に無理なく参加できる状態を保つためにも、室内実習にはない野外実習らしい配慮も要求される。学科設置後2年間ではあるが、試行錯誤を繰り返しつつ進めてきた野外における実習の進め方について現状報告を行い、野外実習における問題点や今後の課題についてもご紹介したいと考えている。

2004-第9回「マスプロ講義における教員と学生のコミュニケーション~刑事法入門の実践例」

中川 孝博 法学部助教授(法学部)
深草学舎 21号館408教室
11月26日(金)17:00~

「全入時代間近」「低学力化進行中」といわれる昨今、1回生に対する専門科目の入門講義が果たすべき課題はとても多いです。受講生250名のマスプロ授業において、学生を主体的学習へ誘うべく、教員は何をすべきでしょうか。何ができるでしょうか。前者と後者にギャップがあるならば、それを埋めるために大学に何をしてもらわなければならないでしょうか。

現在進行中の「刑事法入門」における実践等を紹介しながら、(1)入門講義の目的、(2)目的を実現するための方法(テキストの使い方、レジュメの作り方、講義の進め方、自習への誘因材料の提供方法、効果の確認方法、ITの活用方法等)、(3)大学に対する要望、につき具体的にお話ししたいと思います。抽象的な議論に終わらないように、検討のためのデータを豊富に呈示しながら進めます。

できれば、報告者のwebページ、特に「講義教室603」のコーナーを事前にご覧になっておいてください。
URL: http://www5f.biglobe.ne.jp/~nakagawa1015/0001main.htm簡単なアクセス方法:検索エンジンGoogleで「音楽と刑事法の研究所」を検索

2004-第8回 「必要な道具をうまく使いこなすために」

湯川 宗紀 本学非常勤講師
深草学舎 紫英館2階 東第2会議室
11月16日(火)17:30~

大学生活において必要最低限のPC技術をどう習得させればよいのか。その過程で落伍者を出さないためにはどのようなことが考えられるのか。社会学部一回生開講科目「情報処理実習IA」を事例にあげて、PCに対する恐怖感、煩雑感を取り除くことを目標にしたPC教育の報告を行う。まず現状把握のため、実習開始時に独自に行ったアンケート結果から、新入生のこれまでのPC使用経歴、PCに対するイメージを紹介する。次にそれらを元に行った演習内容、学期末に行った試験結果を紹介する。

報告では、「遊び」感覚で学べる本実習の問題点、修正点などをめぐって、活発な議論が交わされることを望んでいる。

2004-第7回 「社会福祉施設実習から福祉体験活動へ」

藤原 直仁 短期大学部助教授(短期大学部)
深草学舎 21号館403演習室
10月28日(木)17:00~

短期大学部社会福祉科の「健康福祉コース」は、福祉に関心をもちつつも、将来必ずしも福祉現場への就職をめざしてはいない学生の、多様なニーズに応えようと設置された。その主たる目標は、福祉的素養を身につけた幅広い人材育成であり、本コースの卒業生はそうした素養を背景に、一般企業や公務員あるいは編入など、多様な進路を選択する。

「健康福祉コース」でも、必修科目である「社会福祉援助技術現場実習Ⅱ」において社会福祉施設を中心とした施設実習を課してきた。しかしながら、そうした学生が福祉的素養を身につけるには、施設福祉以外での取り組みも実習に取り入れる方がよいと考え、今年度初めて「ひと・人・ヒトヨットレース in 蒲郡」と呼ばれる障害者ヨットレース大会への参加を、福祉体験活動として実施した。今回のFDサロンでは、本大会参加に至る経緯、大会当日の様子、学生の反応などを報告し、今回の福祉体験活動の意義について考えると同時に、ご参加いただいた方々から今後の福祉体験活動のあり方についてご助言を頂戴できれば幸甚である。

2004-第6回 「Going Beyond CALL : A New Approach to Using Computers in Language Learning」 「コンピューターを使用した新しい学習法」

ファーマノフスキー マイケル 助教授(国際文化学部)
瀬田学舎 3号館326演習室
10月15日(金)17:00~

This salon will introduce some new approaches to using computers for learning both Language and culture. Rather than CALL (Computer Assisted Language Learning), teachers in our new Macintosh-equipped rooms are now able to help students in all areas of the Kokusai Bunka Gakubu curriculum through what might better be called "WAL" or "Web-Assisted Learning." I will discuss several approaches to WAL, none of which require any license or payments and most of which can be implemented by both language and content teachers with little or no training or knowledge of computers.

このサロンでは、語学や文化を学習するにあたって、コンピューターを使用した新しい学習法について紹介したい。CALL(Computer Assisted Language Learning)とは違い、この学習法の概念は、WALもしくは Web- Assisted Learningとも呼ばれ、幅広い分野、範囲でこのカリキュラムが役立つと言える。この学習法は、MacOS10 platformを含むソフトを使用(ライセンス取得必要無)コンピューターの知識が少ない方々も簡単に操作できるのも一つの利点といえる。このサロンにて、具体的な使用法をご覧頂きたい。

2004-第5回 「個性ある学生を育てるには(数学の教育を通してみた)」

伊藤 敏和 教授(経済学部)
深草学舎 紫英館1階 大学教育開発センター
9月30日(木)17:30~

次の2つの命題を中心にして、私自身の体験を話す。
1.「90点以上の成績を取った学生はできる学生か」
これは5~6年前にある先生から「伊藤さんの担当している4種類の科目全部を95点と100点の成績を取っているが、この学生は数学ができるのか」と聞かれ、できるとは思わないと答えた。何故か。

2.「個性のある学生を育てるためには研究者自身が成長しつづけなければいけない」
研究者自身の背中をみながら学生がいろんなものを感じとり育っていくから、研究者が自分の現在の状況をどのようにしたら学生にうまく伝えることができるかを実行せねばいけない。私自身試行錯誤している。

2004-第4回 「教養教育のあり方についての私見 ~科学史教育の経験から感じたこと~」

小長谷 大介 講師(経営学部)
深草学舎 紫英館1階 大学教育開発センター
7月15日(木)17:00~

私が科学史に進んだ理由の一つは、科学の歴史をふり返ることが理工系学生にとって重要だと思ったからである。しかし、龍谷大学では、文科系の教養科目として科学史を担当することになり、着任当初は、理科系でない学生に科学史を提供する意義を見出せていたわけではなかった。

現代社会の科学の影響力を考えると、文科系教育であっても、(自然)科学リテラシーは不可欠な項目だろう。その一方で、大綱化以降、文科系教育における自然科学科目の存在感は薄れつつある。この種のギャップは、現在ある教養教育の問題点の一つとなっている(同種の問題が理科系教育にもある)。このような状況のなか、科学の導入教育として、また、科学の全体像を理解する術として、科学史を活用できないかと模索している。科学教育のこれ以上の後退を招かないためにも、自然科学科目を基本に据えた、科学史科目の教育的役割を考えてみたい。

現代の「教養」では、科学リテラシーに加え、情報リテラシーやコミュニケーション能力が問われている。そこでいわれる「教養」とは、古典的教養と何か違いがあるのだろうか。科学史に携わるなかで感じた、現代の教養のあり方についても、この機会に話してみたい。

2004-第3回 「導入教育の模索」

近藤 久雄 大学教育開発センター長
深草学舎 紫英館1階 大学教育開発センター
7月6日(火)17:00~

近年、高等教育の専門家の間では、「高大接続」「初年次教育」といったことばが使われています。また、大学の現場では新入生に対して、生徒から学生への移行をスムーズに行わせるための様々な取り組みが行われています。この背景には、2006年問題に象徴されるように、大学に入学してくる若者たちの質的な変化があるものと考えられます。

「初年次教育(First Year Experiences)」は、もともと多様な学生を受け入れてきたアメリカの大学において、学習の技法を身につけさせるために開発されたものです。少し乱暴ですが、アメリカにおいて既に蓄積のあるこうした「初年次教育」を、いわば日本風にカスタマイズしたものが、「導入教育」であると考えると分かりやすいかもしれません。

「導入教育」は、従来の基礎演習や基礎ゼミとも違いますし、ましてや大学入門ともいささかその概念やコンセプトが違っていると思われます。つまり、従来のこうした科目は、入学試験によって選抜された「学生」が大学で学ぶにあたって必要なスキルや知識を教えるものです。いわばアメリカ型に近いものです。それに対して、「導入教育」の場合、そこにはこれも最近高等教育のテクニカル・タームとして定着しつつある「(生徒から学生への)移行」「(高校と大学の)接続」という概念が入ってきます。

いま、新入生の扱いに苦慮しているあちこちの大学で、様々な「導入教育」の取り組みや議論が行われていますので、そうしたものを紹介しながら、龍谷大学の導入教育について議論をすることができればと考えております。

2004-第2回 「管理教育の現状とその対処」

村澤 真保呂 講師(社会学部)
深草学舎 紫英館1階 大学教育開発センター
6月17日(木)17時00分~

3年前に龍谷大学に赴任した当初は、学生の授業への出席率が高いことに感心したのだが、学生たちによく話を聞いてみるうちに、出席や成績を厳格に管理されることにたいして、学生たちは不満よりむしろ安心を覚えている傾向があることに気がついた。学生たちに見られるこのような管理教育の内面化への傾向は、一方では授業を表向きはスムーズに運ばせるものの、内容的にはその効果を低下させている大きな要因であるように思われる。また、それは怠学や無気力化といった精神衛生上の問題を引き起こす遠因になっているとも考えられる。そのような学生は出席率は高くても知的モチベーションが低く、彼らのモチベーションを高めるべく試行錯誤をしていくうちに、私自身もまたいくつかのジレンマに直面することになった。今回のFDサロンでは、私の龍谷大学赴任以前の各種専門学校での事例も挙げながら、今後の教育現場の困難を予想しつつ、「学習へのモチベーションとは何か」を考え直すきっかけと、学生が積極的に参加する授業づくりを考えるための材料を提供したい。

2004-第1回 「FDを考える -大学教育改革への私見-」

上垣 豊 教授(法学部)
深草学舎 紫英館2階 東第2会議室
5月27日(木)17時30分~

FD(ファカルティ・ディベロップメント)という外来語が今、日本の大学を席巻している。1998年の大学審答申では、FDを大学設置基準で努力義務化するように提言されている。本学でもFD活動が1998年度以降全学的に取り組まれている。また、全国の様々な大学でFDセンターと総称される機関が設置されているが、本学に近年設置された大学教育開発センターもこのFDセンターの一種である。

私の知る限りでは龍大のFD予算は他大学に遜色ないものであり、FDセンター設置も私学の中では比較的早い。しかし、その割には本学でのFD活動は効果が上がっていないと思うのは私だけではないであろう。では、FD活動がさほど効果が上がっていないとしたら、それは何が悪いのか?教員が悪いのか、制度が悪いのか、学生が悪いのか?今回のサロンでは、私はその大きな要因としてFDの哲学、理念の軽視を問題にしてみたい。

ところでFDとは何か、とあらためて問うてみると、要領を得た回答は案外かえってこない。高等教育研究の専門家の間でさえ、Faculty Developmentについて共通理解があるわけではない。FDは教授法、授業改善のことであると本学では理解されているように見受けられる。だが、それは狭義の意味にすぎない。FDはInstructional Developmentだけではなく、組織開発(Organizational Development)も含まれている。大学教育のなかでFDの対象とならないものはないほどである。

そもそもFDは本場のアメリカにおいても多様な意味で使われており、そのこともあって定訳は存在しない。しかし、それでも有力な説として二通りの訳し方が存在している。一つは「教授団の能力開発」であり、もう一つは「大学教授職の資質開発」である。今回のFDサロンでは、FDという概念がイギリス、アメリカで生まれた背景や、こうした訳語の背後にある考え方、すなわち日本でのFDの受容のされ方などを中心に私見を論じることにしたい。私の理解では、FDとは、教員個人のあるいは教員集団が自主的に自らの教育活動を振り返り、学問の自由のもとに、国際的、全国的な成果に学びながら学術的な検討を加える活動である。したがって行政主導でFDについての統一的な解釈を与えるのは、かえってFD本来の精神に反することになる。FDサロンでの私の考えもあくまで一つの論にすぎないことをおことわりしておく。