第4回FD報告会の開催報告

 2010年度第4回「FD報告会」は、10月27日に開催された「2010年度第1回文学部FD研究会」を全学に公開する形で実施されました。当日は、教員21名、事務職員6名(アドバイザリーボードを含む)の計27名が参加しました。
今回は、文学部FD研究会の2010年度年間テーマである「学生が"学び"を実感できる教育の実現をめざして」に基づき、具体的には「カリキュラム・チェックリストの効用と課題」と題して報告およびディスカッションを行いました。
龍谷大学では、本年5月に全開講科目を対象にカリキュラム・チェックリスト(以下、CCL)を作成することが決まり、以降、各教学責任主体において鋭意取り組んできました。文学部でも各学科・専攻で作成を進め、現在開講している専攻科目を対象としたCCL(暫定版)を8月上旬にとりまとめたところです。今回の研究会では、その作業過程および結果から浮かび上がったCCLの効用と問題点とを議論し、さらなる教育の充実に必要なカリキュラム改善の内容や方法などについて意見交換しました。
最初に、文学部FD活動推進委員会委員長の安藤徹氏が、今回作成したCCLと昨年度策定した3つの方針(ディプロマ・ポリシー(DP)、カリキュラム・ポリシー(CP)、アドミッション・ポリシー(AP))との関連、およびCCL作成の意義と重要性について、他大学の事例や中央教育審議会の答申などを用いつつ解説しました。次に、同委員会副委員長で、今年度委員会内に設置したカリキュラム・ワーキンググループ代表としてCCL作成に中心的に携わってきた市川良文氏より、教員(委員)対象に実施した「文学部カリキュラム・チェックリストに関わるアンケート」について、その結果も含めて説明がなされました。
その後、参加者によるディスカッションが展開されました。そこでは、CCLの位置づけ・目的や作成手順・手続き、観点(領域)別の「学生に保証する基本的な資質」や各授業の到達目標の設定のしかたやその具体的内容、シラバスの重要性、3Pとの関連性など、さまざまな問題点の指摘がありました。その他、今回作成したCCLを今後の教育内容・方法等の改善に資するものとして有効に機能させるべく、カリキュラム・マップの作成、開講科目の精査やカリキュラムの改善、シラバスの充実などに取り組むことの必要性・重要性についても発言があるなど、活発な議論が行われました。


当日の配付資料

安藤 徹(文学部FD活動推進委員会委員長)のコメント

 文学部では、学部の教育活動にかんする情報交換や認識を共有する場として、2007年度より「文学FD研究会」を年2回開催し、FD関連のさまざまなテーマを取り上げてきました。今回は、カリキュラム・チェックリスト(CCL)の作成というはじめての取り組みをうけて、今後のカリキュラム改善へとつなげていくべく、その効用と問題点とを率直に議論しました。
研究会を通じて改めて感じられたのは、構成員間での情報の共有と共通認識の醸成とがいかに重要かということです。そもそもCCLとは何なのか、何のために作成するのか、どう作成するのか、どう活かすのか、何の価値があるのか.........。こうした疑問が出ているうちは、CCLの実質的な効用はなかなか望めません。一部の教職員が先導役となってFD活動を推進していくこと自体は必要なことですが、しかしそれだけではけっして充分ではありません。真のFD活動は、構成員全員で(かりに一枚岩でないとしても)取り組むことによってこそ、はじめて実を結ぶものでしょう。
とはいえ、教育の充実、改善の必要性そのものはすでにコンテクストとして共有されているはずです。問題は、より具体的なレベルでどのように取り組み、学生にとっても教職員にとっても実感できる形でどう成果を出せるか、という点で理解を深め合うことではないでしょうか。そのためのツールとしてCCLは万能ではないとしても、しかしうまく使いこなすことができれば有用かもしれない。今回、時間をかけて「CCLって何や?」というやりとりをする機会を設けたことが、そうした理解を促し、具体的なアクションに踏み出すきっかけになれば、と思います。
とりあえず作成してみた、で終わらせないことが肝要です。

アドバイザリーボード・小瀬 一(教学部長)のコメント

 DPの今後の活用方法について示唆に富むものだったと思いました。昨年度来、各学部では「三つのポリシー」の策定にあたり、形にすることができたがそれは現状を表現するもので、完成をめざす途上のものとも言えます。その結果も大切ですが、作成・修正する過程そのものが、それぞれの先生方の認識を深める貴重な機会と再認識しました。
せっかくの機会(相当な労力を費やしたという意味でも)と思われるので、本研究会の成果を多角的に利用されればと考えます。また、その結果が学部内外への良いきっかけとなればと思いました。
また、カリキュラム・チェックリストの作成に参加された先生方が気付かれたことは、それぞれに的を射ていて、今後認識の共通点について意見がまとまれば、より新しい議論展開が期待できると感じました。